散歩の途中で思い出す、ある利用者さんのこと

最近、朝の散歩を習慣にしています。
近所の川沿いを歩くのが日課になっていて、 四季折々の景色を楽しみながら30分ほど歩いています。

今朝、川辺のベンチに座っている高齢の男性を見かけました。
穏やかな表情で川面を眺めているその姿を見て、 かつて担当していた利用者さんのことを思い出しました。

毎朝、窓から外を眺めていたAさん

その方は80代後半の男性で、Aさんといいます。
足腰が弱くなり外出が難しくなっていましたが、 毎朝、居室の窓辺に座って外の景色を眺めるのが日課でした。

「若い頃は毎日外を歩いていたんだよ」
Aさんはよくそう話してくれました。
通勤で歩いた道、休日に家族と散歩した公園のこと。 外の景色を見ながら、昔の記憶を辿っているようでした。

当時の私は、ケアの業務に追われていて、 Aさんとゆっくり話す時間を十分に取れていなかったように思います。
それでもAさんは、私が部屋を訪れるたびに 穏やかに微笑んで「今日もいい天気だね」と声をかけてくれました。

「外を歩ける」ということ

今、自分の足で自由に散歩ができる。
そのことが、どれほど恵まれていることか。 Aさんと過ごした時間を思い出すたびに、改めて感じます。

介護の仕事を離れてから数年が経ちますが、 出会った方々のことは今でも時々思い出します。
特に何があるわけでもなく、ふとした瞬間に。

今朝見かけた男性が、どんな人生を歩んできたのかは分かりません。
でも、あの穏やかな表情を見て、 なんだか少し心が温かくなりました。

小さなことに気づける毎日を

歳を重ねると、できることが少しずつ減っていく。
それは自然なことで、避けられないことでもあります。

だからこそ、今できることを大切にしたい。
散歩ができること、季節の移り変わりを感じられること、 誰かとの何気ない会話。
そういう小さなことに感謝できる自分でありたいと思います。

明日もまた、川沿いを歩いてみようと思います。

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