先日、実家の片付けを手伝ってきました。
母が「そろそろ身の回りを整理しておきたい」と言い出したのがきっかけです。
80歳を過ぎた母は、まだまだ元気ではありますが、 最近は「いつどうなるかわからないから」と 少しずつ荷物を減らし始めています。
捨てられないものたち
実家には、私が子どもの頃から変わらずにあるものがたくさんあります。
古いアルバム、使わなくなった食器、押入れの奥にしまわれた座布団。
見覚えのあるものも、すっかり忘れていたものもありました。
「これはあなたが小学生の時に使っていた筆箱よ」
母がそう言って取り出したのは、色褪せたプラスチックの筆箱でした。
正直、私にはほとんど記憶がありません。
でも母にとっては、大切な思い出の品なのでしょう。
介護の仕事をしていた頃、利用者さんのご家族が
「親の荷物が多すぎて困っている」と相談されることがよくありました。
その時は「ご本人にとっては大切なものなんですよね」と
なんとなく答えていましたが、
今、自分が同じ立場になって、その重さを実感しています。
思い出を手放すということ
片付けを進める中で、母は何度も手を止めました。
「これはお父さんが買ってきたものだから」
「これはあなたたちが小さい頃に使っていたものだから」
一つひとつのものに、家族との思い出が詰まっているのです。
私は最初、「使わないものは捨てた方がいい」と思っていました。
でも、母の話を聞いているうちに、
それは簡単なことではないのだと気づきました。
ものを手放すということは、思い出を手放すことでもある。
少なくとも母にとっては、そういうことなのだと思います。
急がなくていい
結局、その日は大きなものはほとんど処分せず、
明らかなゴミだけを片付けて終わりました。
効率的ではなかったかもしれませんが、
母と一緒に昔のアルバムを見たり、
思い出話を聞いたりする時間は、悪くなかったと思います。
介護の仕事をしていた時、
「その人のペースに合わせる」ということをよく言われました。
片付けも同じなのかもしれません。
母が納得できるペースで、少しずつ進めていければいい。
急かさず、でも寄り添いながら。
そんなことを考えた一日でした。
来月また、実家に行く予定です。
今度はどんな思い出が出てくるのか、少し楽しみでもあります。